ディテール:レンジフード

室内循環式レンジフード。見積中に森みわさんが設計した前沢パッシブハウスで実物をはじめて見て、仕様変更し採用した。

前沢パッシブハウス

従来のレンジフードは調理の際に発生する油煙や蒸気、臭気などの汚れた空気を屋外に排出している。
当然、室内は負圧となり排出した分、外部の空気を取り入れることになる。冷暖房負荷が上がる。

それに対し室内循環式は、換気扇の中でフィルターに通すことで汚れや臭気を取り除き、奇麗な状態にしたものを室内に戻して循環させる構造になっている。

スタイルはやぼったいのに、アリアフィーナなどより高価で、温熱環境の為だけの人柱だと思っていた。
パッシブハウスでもここまでの設備を導入する例は少なく、コストの問題から関係者でも賛否は分かれる。ガスでは採用できないので商売でお客様の家を作る場合は歯切れが悪くなるからではと思うが、料理する際に外気を入れなくて良いのは冷暖房負荷低減の上で大きなメリットとなるはずだ。

実際、冬に大きく恩恵を実感することとなった。よく冬季の乾燥を防ぐためストーブの上にやかんを置いたり加湿器をつけないと湿度が30%台になるという話を聞く。第1種全熱交換換気のエコハウスでも40%いくかいかないかというところをいくつか見た。

我が家の場合は22℃のとき、相対湿度45%〜55%くらいで安定している。引っ越しから1年経過し、過乾燥による肌荒れなどは感じていない。

さて、揚げ物をよく作る僕ら家族としては、以下の2点が不安だった。

1.匂いはとれるか。
揚げ物の空気が室内に戻るなんて、本当に匂いは取れるのだろうか。その心配は完全に杞憂だった。前の家で使っていた普通のレンジフードよりも、匂いがしないのはどういうことだろうか。

IHではガスコンロと異なり、フライパンや鍋周りの無駄な上昇気流が発生しないので、そもそも部屋の中に油が拡散しにくい。だからだとしか説明のしようがないが、先日もうちでパーティーをやり牡蠣フライをたくさんあげたけど、友人たちも匂いはしないと言っていた。

いちおう補助換気機能付きで、普通の換気扇と同じようにダクトを接続し、匂いの強いものは室内に戻さず排出できるタイプを選定している。だけどカレーのときですら出番がない。使ったのは一度ポップコーンを焦がしてしまい思いっきり煙が出たときくらいだ。

室内循環式レンジフードの補助換気

2.換気扇が油べったりにならないか。
フィルターで空気をきれいにして戻すということは、どうなってしまうんだろうと心配していた。
実際には個人がアクセスできるのはスロットフィルタまで。油吸着、脱煙、脱臭などの各フィルタはメーカーのが数年に一度来てメンテナンスしてくれる。
スロットフィルタ手前までの部材はもちろん食洗機できれいになるので手間いらず。

もちろん室内が負圧にならないので、薪ストーブとの相性もバッチリ。
見た目の部分だけ工夫すれば、高性能住宅で特に薪ストーブを使う家にはぜひおすすめしたい設備だと思う。
ガスコンロの場合は燃焼で大量のCO2が出るため室内循環式は使えない。その場合は同時給排式になると思うけれど、物によっては強風や薪ストーブで使用していないときでも外気が入って来てしまうと関係者から聞いたので、気密施工のプロにおすすめを確認したほうがいいでしょう。

仕様
富士工業 室内循環式レンジフード 補助換気機能付きシリーズ NSRF-RKH-751

国際パッシブハウス・オープンデー2019のお知らせ

11/8-10に国際パッシブハウス・オープンデー2019が開催されます。
世界中のパッシブハウス・レベルの建物が、 一同に見学会を行う国際イベントです。

特設サイトリンク

御影用水エコハウスも11/9(土)amで公開予定です。見学は上のリンクからお申込いただけます。
昨年の公開前に考えたこと、感じたことを、SNSより転載します。

 

家造りももうすぐ完成です。

引っ越しはまだ先ですが、11/9-11の3日間、国際パッシブハウスオープンデーに合わせて公開するので、今日は準備してきました。

シュガースポットコーヒー さんで居心地が良いな、こんな家建てたいなとふと思い立ち、設計した建築家さんにその場で連絡をとってから、約2年。

もともと「高気密高断熱」は家を建てるにあたり、日本の住宅寿命の短さに衝撃を受けたことから、長く愛され残る建物を実現するための要素の一つでした。

住宅業界は売らんがための独自工法、薬事法の家バージョンがあったら送検間違い無しの広告宣伝が多いですが(多分営業も理解しないでやってると思う)、一応電力会社にいたので、筋の良い技術理論にはたどりつくことができました。

住宅は素人ながらパッシブハウス・ジャパンの仲間に入れていただき、勉強して様々な高性能住宅を見たりするうちに元来のオタク気質が刺激されたのか、またはデータセンターという省エネ技術の塊に、20代後半の人生を捧げた記憶が蘇ったのか、すっかり断熱の世界にハマっています。

話の流れで家を軽井沢に建てていて、建築家の設計した平屋だとわかると、色々な反応があります。

婉曲的に、お金がかかったでしょとか、高級なのが好きなんだね的なことを言われることが多いけれど、僕の場合それは明確に違います。

ラグジュアリーよりシンプル、豪華より素朴。

いわゆるホテルライクな、華美で、でもエネルギーをたくさん使わないと快適でない建物や、山小屋風で質素な、そして温熱環境的にもプアな寒い建物が多い軽井沢において、別のベクトルを持つ家になったと思います。

3.11の時に、もう二度とこんな思いはしたくないってみんなが感じたはずです。
でも事実上原子力が減りつつある中、エネルギーをこれまでと同じように無駄遣いしていくのでしょうか?

今回は原油天然ガスを輸入し流出するお金を、きちんとした性能のある建物を建てて、林業や大工さんはじめとする職人の仕事に振り向けてみました。

ひとりひとりが省エネで持続可能な暮らしをすることが、解決策になると思っています。

僕は評論家にはなりません。僕から見えたいまの社会に対して、少数派かもしれないれど、自分は与しないことをローン組んでまで意見表明した結果がこの家です。

35年頑張りますw

車庫


© 上田 宏

ガレージ

設計開始時、Sさんにはガレージは要らないと伝えていた。
心の底からそう思っていたわけではない、軽井沢は冬になれば晴れていても霜が降りる。毎朝通勤前にフロントガラスの霜取りをすると思うとげんなりだれど、耐震性能、断熱性能の要求と、坪単価を考えると残念だけど無理だなという気持ちだった。
2台分のガレージが、相当な面積を取り横長の間延びした形になるなという想像もしていた。

Sさんからの第1案には、その諦めたはずのガレージがあった。雨雪の日、荷物や子供の積みおろしや霜取りを考えると、玄関横にあったほうが良いという提案だった。
壁は2方向だけ、長い車だと鼻先が出るけれど、全体の意匠は恐ろしく整っており美しい。僕としては屋根がかかっていれば、冬の霜とりはしなくていいので壁はいらなかった。広いスーパーの駐車場で1台分横幅2.5m、それで壁を作ると圧迫感があるが、壁がないことで限られたスペースで成立している。

 

外物置

自然の中に住むには、都会では使わない様々なものが必要となる。草刈機、ブロワー、チェンソーなどを持っている人は多いし、雪かきや車の雪下ろし棒などは必需品だ。

そこで泥のついたままでも出し入れできる外物置をあらかじめ作ってもらった。
前述の必需品に加え、キャンプ用のテント、タープにチェア、薪割り斧、オイルから、スキー、スノーボード、そして車社会でめったに使わなくなったベビーカーまで収納されている。

 

設備置場

接道と配置の関係上、外壁北面だからといって裏側にはできない。3面ファサードで、設備が見えていい場所がないのだ。考えた結果、外物置の一部を設備置場とし、そこに収納することにした。
縦長に開口された信州カラマツの扉の奥に、マルチエアコンの室外機と、エコキュートのタンク、室外機が収められている。こういった扉を無垢材、しかもよく動くカラマツで作るのは難しいらしい。当初は扉の裏側がしっかりしすぎており、エコキュートの室外機によって冷やされた空気が滞留したので、開口率を高めるため改造した。

軽井沢の第一種低層住居専用地域の場合、ほぼ都市ガスは供給されていないのでプロパンガスによる給湯か、エコキュートか迷うことになる。もちろんエネルギー源をどうするかという問題は、給湯だけで決まるものではなく煮炊き、オーブン、衣類乾燥機で決める人もいると思うが、我が家の場合は緊急時に生活用水を確保する観点からエコキュートにした。

エコキュートのタンクには460リットルの温水が貯蔵され、災害発生時など断水の場合には、タンクの下部から生活用水を取り出せる。

 

振り返ると、コンペもせずお願いした建築家の第一案で、躊躇なく決めることができた背景にはガレージの存在があった。

それは雨や雪の日に子どもを抱えながら荷物を降ろし玄関を開ける大変さと、この位置に車を停め扉を開ける利便性が瞬時に想像でき、設計にあたって実際の生活を考えてくれているんだという確かな安心感を得られたのももちろんだけど、やっぱり心の底では自分の家を建てるなら「ガレージ」が欲しかったんだと思う。

80年代前半生まれのギーク達にとって、ガレージは特別な意味を持つ。ヒーローが仲間たちとコンピューターを作り革命を起こした物語はあまりにも有名だ。

いにしえのオタク少年は何者にもなれないままいつしか夫となり父になった。世の中をあっと言わせられなくても、ガレージさえそこにあれば、いま欲しいものを作ることはできる。

この年になってできた仲間たちと一緒に。

外壁:信州カラマツ
塗装:オスモカラークリア2度塗り
扉:建具造作
倹飩:大工造作
電気自動車用コンセント:Panasonic

 

風呂

造作バスルーム

風呂は、躯体の性能を除いて、最も悩み時間をかけた部分になった。
建築家に設計依頼するなど、家造りにこだわりのある人の多くはまず在来工法か、ユニットかで悩むのではないか。そうして調べ始めてまた迷う、ネットを見てもいろいろなことが言われているし、設計者や施工会社に聞いても様々な答えが帰ってくる。

僕の場合もそうだった。もともとお風呂で本を読んだり動画を見たりするのが好きだし、ストレスが溜まるとホットドリンクを持ち込んで浴槽に浸かりながら音楽を聞いて過ごす。人一倍お風呂には思い入れがあるけれど、在来の造作バスは恐ろしいイメージがあり、踏み切れないでいた。

施主それぞれが重きを置く価値が異なり、答える側も知識不足、意図した誘導、認知バイアスがあるのだろう。
造作か、ユニットか一般的な論点を整理すると、以下の通りとなる。

■ユニットバスのPros/Cons
 ○水漏れの心配はほとんどない。
 ○冬あったかい。
 ○費用が低廉。
 ×材料、水栓など選択肢が限られる。
 ×カッコよさで造作に劣る。

■造作バスのPros/Cons
 ○自分ですべて好きな材料を選び作れる。
 ○かっこいい。
 ×冬寒い。
 ×水漏れリスクがある。
 ×費用が高い。

 

なぜユニットバスは暖かく造作は寒いと言われるのか?

僕も調べて衝撃を受けたのだが、昔の造作バスは水漏れリスク低減のためか、基礎から直接砕石や土間コンクリートをうち断熱材無しで浴室が置かれていた。確かに水が漏れても屋内側には侵入しないけれど、断熱区画外でタイルのヒヤッとした感じを裸足に感じたんだろう。何より裸だし室温自体寒かったはずだ。

ユニットバスは室内側区画に置くことができ、断熱材に包まれていて、水密性によって気密も取れている。素材もプラスチック系だったことが「造作よりユニットは暖かい」という評判を生んだのではなかろうか。

そこで超高断熱仕様の室内側区画に造作することで、普通の家のユニットバスより暖かくなるはずだ。僕は、はっきりと旧来型の造作バスの構造は受け入れられないと宣言した。
最近の家づくりブログを見ても、いまだに基礎直置きの造作バスが多いようで、冬寒いというのを読む。そんな家を提供するのは不作為だと思うし、施主の健康を何だと思っているのか聞きたい。

初めて入浴した日は11月下旬だった。軽井沢の平均外気温は4.4度、最低気温は氷点下の夜。
裸足でタイルに触れた瞬間に奇妙な気がした、体が覚えているあのひんやりとした感触がないのだ。意識せずに力が入っていた足の裏が、おそるおそるではなくフローリングと変わらない歩き方をするまで時間はかからなかった。

 

水漏れを防ぐ

在来が水漏れするというのなら、ユニットバスと同じ構造で造作すればいいんじゃないだろうかと考えた。
そこで調べてみると、昔の造作バスは、タイルが割れて底から水が侵入するなどあったものの、現代ではFRPで防水するので、適切な設計施工をすればユニットバスとそれほど変わらない。

FRPは海水に浮かぶボートなどでも長年使われている。耐水合板で区画した全体をすべてFRPで包む。直角部分が破れないよう工夫し、その上にモルタルをし好きなタイルで仕上げる。あとは下地の清掃と平滑、樹脂と硬化剤の配合をキッチリするなど腕と監理次第だと考えた。

また、水漏れが問題を大きくするのは、長年漏れていても気が付かず構造にダメージを与えるからである。残念ながら漏水センサーはこれといったものがなかったので、現状は温湿度センサーを配置してモニタリングしているが、床下に100V電源を配線しておき、コンセントを付け良い商品が発売され次第2重化して設置予定とした。

 

費用

費用については素材選定次第だけど、直接工事費はさすがに安いユニットにはかなり負けるものの、高いユニットバスよりはかなり安く収まった。
ただタイルの割付など、目地7mm, 5mm, 3mmパターンすべてCADで施工図を書き、施工自体も設備や防水など相当チェックする内容があるので、そうした費用は当然必要になってくる。

また想像だけど、施工会社観点だと水漏れって一大事、ユニットならメーカーの責任施工でほとんど何もしなくても工事が終わり、しかもアフターサービスも万全。造作で劣化し何かあったら対応はしなくてはいけない、でも保守契約もなく費用をいただいているわけではないので、サービスを維持するのは難しい。

施工会社視点では僕(自社の役員)が施主だからやったけど、一般的に提供するには保守費用相当を初期費用にいれるか、定期点検を有料化して定期点検を受けていないとアフターしないなどの仕組みを考えるしかない。後者のが納得感はあるかなと思うが、聞いたことがないので前者にしているのではないか。それが造作バスは恐ろしく高いという話の正体だろう。

 

さて、自由にできるとしてどういう雰囲気のバスルームを作ろうか。
折角造作だからホテルライクにしようとあれこれ調べた時に出会ったのが、注文住宅ブログの金字塔「羊飼いたちの休日」
豪華や華美という方向ではなく、品のある美しい浴室であり、「ホテルライク」にとらわれていた僕にとって衝撃だった。
ブログの他のエントリーも貪るように読み、素晴らしい文章と写真、背景にある深い洞察の虜になった僕は、タイルは名古屋モザイクのひだs、色はホワイトで馬目地貼り、目地幅3mmライトグレーとほとんど近い仕様に決定した。

水栓はHitsのグローエアウトレットでフル施主支給(お勧めしません)
数日間Houzzでバスルームを見て回った僕の研究成果によると、バスルームのかっこよさを決めるのは水栓が普通のか、埋込型かに帰結する。

浴槽はカルデバイのジャパンモデル。深いといわれているけど浅目に入ることもできるし、我が家はこの選択でよかった。

夫婦2人で日常的に入ることはないが、子どもたちとは基本一緒に入っている。取っ手がいるかいらないか悩み西麻布のTformに見に行った。子どもと入浴するときに、横幅が狭くなるのと、結局後付けなので見た目が気にいらないという結論になった。

浴槽の裏側は一応ウレタン吹いておいた。まあ少しお湯が冷めにくくなるかなという気休めである。

目地色は前述の通りライトグレー。ひだs馬目地張りでベタな感じになるのを、この色と目地幅が防ぎ流行りっぽくない感じが出ている。カビが心配だったのでエンタープライズ分野で使われるホーロー化コーティングを自分で塗った。疑似科学などではなくて本当に液体ガラスなので、塗ったそばからみるみるガラス様に硬化していく。
タイルの質感が変わってしまうので、使い方は要注意だと感じた。

ガラスドアはYKKAPの既製品。えっYKKAPにそんなドアあるの?と我が家を見に来た建築家さんたちが驚いていた。
このフレーム、ドアハンドルださいかなと思ったけど、親子扉開口で広いうえに防水もしっかりで、子どもがガラス越しに水かけまくったりしても大丈夫な安心感。費用も低廉だし、見た目は住み始めると案外気にならない。
とにかく無茶な遊び方をする子育て世代には強度、水密性含めおススメ。

体をふいたタオルで、最後の人がガラスドアを拭いて出るようにしている。いまのところ水垢がついておらず満足している。

壁:名古屋モザイク hida-s
床:LIXIL サーモタイル
窓:YKKAP APW430
浴槽:KALDEWAI Saniform Plus Japan Model
水栓:GROHE Grotherm 3000
ドア:YKKAP サニセーフⅡ HG
コーティング:日興 テリオスコートNP-360G
換気:三菱電機ダクト用ロスナイ VL-70BZ2

洗面脱衣所


© 上田 宏

洗面台

洗面台の存在自体、家づくりをはじめるまで意識したことがなかった僕は、奥さんの意見で進めることにした。
聞くと、洗面器は大きいほうが便利かなと言う。「造作洗面台」で検索すると、ダブルボウルの例がよく出てくるけれど、一つで幅広のがスペースを有効活用できそうだと。
T-formで幅の大きい順に表示し、2人でひとつひとつ見ていく中で目に止まった1枚の写真。これで洗面器は決まった。


https://www.tform.jp/products/item_one.php?id=13733#8

 

水栓の数

ダブルボウルは不要だけど、水栓は2個ある方が便利で見た目もいい。だけど、奥さんは「いらない」と、それはもうきっぱりと言った。

水栓2個の懸念としては、どうしても稼働が入り口に近い方とか片方に偏る。交換するときは前と同じものがなければ、デザイン的におかしくなるので、まだあまり使ってない方も変える必要が出てくるかなと自分を納得させた。

 

天板

洗面器置きの天板は、こうしたテイストの家だと木が多い。昔住んでいた家はやはり造作洗面台であったが、洗面器周囲のウレタン塗装された木材はそのうちに腐り、コップの底に丸く跡がつき、結局工業製品の洗面台に入れ替えていた。
もちろん使った後きちんと拭き取れば、長きにわたって美しく維持し使うことは可能だと思うけど、住み始めてから、子どもたちが濡らしたままにしているのを見てストレスを感じる光景が、容易に目に浮かんだ。
プラスチックな感じではなくて、水への耐久性があり美しいものがいい。木を採用するのは精神的に無理だ。家具の打合せ時に僕がそういうと、Sさん夫妻はコーリアンのサンプルを見せてくれた。
木より少し高いですが、水を気にしないで済みますという言葉を聞き、僕ら家族は心穏やかな毎日の為に採用を決めたのだった。

コーリアンのサンプルが届き驚いたのはカラーが数十種類もあること。サンプルにはない国内在庫もあり、洗面器が届いてから実際の環境に近い中で見て決めた。

 

洗面器の型番をSさんに伝え、出来上がった図面を見ると鏡の部分が収納になっていなかった。
スペースがもったいないかなと思ったけど、両側と下部の収納があれば、僕らには十分だ。またスマートミラーにしようか迷ったけど、透過できるもので満足のいくクオリティのものが見つからなかったので、その意味でも、鏡の裏側のスペースを使う理由はない。

造作洗面台の施工例を見るとたいてい鏡が収納になっているので、この大きさの1枚鏡というのはあまり目にしないものだけど、実物を見るとかっこいい。

洗面台本体:家具造作(タモ合板フラッシュ)
水栓:GROHE ESSENCE
洗面器:CATALANO Premium
天板:DuPont CORIAN TRW

 

脱衣所

洗面室とは分割できるよう、脱衣所の収納サイズに合わせて鍵付きの引き戸を仕込んだ。
建築家の作る家=ガラスドアのバスルームというイメージが有る。いつもそういった写真を見ると、誰かの入浴中、洗面使えないのか心配になっていた。

今回は「ガラスドアのお風呂だと入浴中洗面使えない問題」に正面から取り組んだ訳だ。普段は開けておけば、開放感ある広い洗面脱衣所として使用できる。

洗濯機もここに置くので、ランドリースペースを兼ねることにした。近年スギ、ヒノキ、ブタクサ、イネ、黄砂、柔軟剤、野焼きの煙とあらゆるアレルギーが出て一年中外干しできない体になった僕は、家を建てるなら乾燥室が欲しかった。

ハウスメーカーの間取りを見ると、温室的な空間が作られていることが多い。だけど寒い軽井沢では、陽だまりは家族の過ごす場所にしたい。

洗濯物が乾くメカニズムは日射ではない。温度と風量だ。そこで洗濯機の近くにマルチエアコンの子機とサーキュレーター、物干しをつけ、収納には洗剤やハンガーなどを用意する。最強の導線短縮ランドリースペースができたのではないか。

Pid 4m

物干しはホスクリーンなどいろいろ見たけれど、シンプルで一番使い勝手が良さそうな森田アルミ工業のpid 4Mにした。
Amazonでは偽物が売られているので要注意、本物はMade in Japanで素材もしっかりしており精度が良い。

脱衣所扉:建具造作
脱衣所収納:家具造作(タモ合板フラッシュ)
エアコン:ダイキン ココタス C08VCCV
物干し:森田アルミ工業 pid 4M

次回は自分でも書くのが楽しみなお風呂です。写真がうまく撮れず悩んでいますが。
 

リビング


© 上田 宏

リビング

ずっと家の中でテレビとソファーが一等地を占め、リビングという名前がついているのが疑問だった。
結婚して最初の住居は立地だけで決めた50平米程度のマンションだったけれど、テレビを置かなかったため、2人ぐらしでも十分な広さがあったし、「コンセプト`3-1 暮らし中心の設計」のとおり、新しい家ではもう一度家族の過ごし方に合ったリビングを作ろうと考えた。

Sさんからの提案は、薪ストーブだけ設置し、あとは自由なスペースにするというものだった。

僕なりの解釈だけど、各々が好きなように過ごせる場所だと思った。おもちゃで遊びたければ遊べばいいし、工作したければすればいい。くつろぎたければ薪ストーブに火を入れ、ラウンジチェアを置けば、それ以上何が必要だろうか。

こうしてテレビを置かないことで生まれた、自由で美しい空間が僕らのリビングになった。

 

図書コーナーとつくりつけのソファ

家づくりを考え始めるまえ、漠然と図書室がほしいと思っていた。けれど、住宅を高断熱化しスペースを絞るイメージが出来、あらためて考えてみると、引っ越しの多かった我が家は蔵書の大半をスキャンしていることに気がついた。

もう紙の本は写真集と絵本くらいで、増えるのもそれらとお気に入りの作家の小説くらいだ。

Sさんと相談し、リビングの角に大工造作で本棚と、ちょっとしたソファを置くことにした。ソファには詳しくないのでお任せし、僕からのリクエストは「洗えること」(子供がいるとすぐ汚れるので必須)と「動かせること」(将来のレイアウト変更に対応できるよう)の2点をお願いした。

クッションは布地を選び、Sさんがいつも依頼しているという長野県内の製作者さんによるもの。クッションを外すと一応収納になっていて、いつも使っていないものをしまっている。

コーヒーを置けるサイドテーブルはコンセント付き。

座るとテラスやその上の屋根も見える贅沢な雰囲気で、窓ふきとかどうするんだって思ったけど、ここに窓があってよかった。


© 上田 宏

床:クリ無垢材
薪ストーブ:JOTUL F305 外気導入
炉台:コンクリート平板
ソファ:家具造作
クッション:小林椅子製作所
本棚:大工造作
窓:YKKAP APW431, APW430, ウッドテック秋冨(Low-Eトリプル)
天井照明:Panasonic
壁照明:Koizumi
 

テラス


© 上田 宏


© shiro

ウッドデッキ

まだ土地探しをしているときから、本物の木で作ったウッドデッキが欲しいと思っていた。
昔からカフェやレストランではテラス席が好きで、大抵の季節はそこでビールを楽しんでいた。屋外席は喫煙か、またはペット同伴でないと座れないお店が増えたのはいつ頃からだっただろうか。そのどちらも満たさない僕は、タバコをやめた唯一のデメリットだななんて思ったものだ。

ウッドデッキ自体が好きというわけではなくて、朝パンをトーストしコーヒを入れテラスで食べたり、昼や夜に料理を作り冷やしたビールと一緒に外に出る、そういう時間が欲しかったのかもしれない。

木でウッドデッキをつくるというと、これは造作バスでも同じことが言えるんだけど、腐って危ないよとか、すぐだめになると周りから忠告を受けた。
そこで調べると、僕のリサーチ(大袈裟だな)によれば、短い期間でダメになるウッドデッキには、いくつか特徴がある。

 1.下が地面で湿気にさらされる
 2.材質がSPFなど耐久性のない木材である
 3.屋根がかかっておらず雨雪、紫外線の影響を受ける

ウッドデッキの耐久性は、まず基礎から。湿気を防ぐため土に束石置きや砕石敷ではなく、家の基礎工事とあわせてウッドデッキにもコンクリート基礎を打った。これで湿気や土中の腐食菌を心配せずに済む。
またコンクリートは基礎と同時に打設したので、ケイ酸塩系含浸材を2度塗りし非常に高耐久にした。これでもし万が一デッキがだめになっても、水平出しとか土をいじる工事は不要で木だけ変えればよい。

木材はレッドシダーとヒバ。調べるとウリンやアコヤを使いたくなってくるけれど、全部でそれをやっていたら建たないので見積前に断念。塗装は耐久性向上のためウッドロングエコを塗った。経年により変化した写真を見ても、すごくいい風合いで楽しみにしている。

テラスを日頃からアウトドアリビングとして、自然の中で朝ご飯を食べたり、真夏の昼下がりにビール飲んだりするには屋根が必須だし、耐久性の点でも長持ちのため雨をかけたくなかった。奇をてらったわけではなく必然的にリビングとダイニングにつながるよう接し、屋根のラインに合わせた形になった。この先端どう考えても使うことはないんだけど、こんな尖ったデッキって見たことないしかっこいい。

リビングから外に出て鳥の声を聞き、ふと足元を見ると目の前の雑木林を通過した光が、デッキに影を作っている。
その時ここに家を建てて良かったと、ふと思った。


© shiro

デッキ材:ヒバ
土台、大引、束:レッドシダー
塗装:ウッドロングエコ2回塗り
基礎:鉄筋コンクリート(24-15-20N)

 

パントリー

パントリー

パントリーは、災害時に72時間分の食料と飲料水を確保する観点から容量が大きくなった。

ストッカーと米30kg(銀色のブリキ缶)

昔はこういったオープンな収納は苦手だったけれど、建築雑誌や宣伝ではなくインスタグラムで実際に人が生活している家々の写真を目にするようになって、適度な生活感がありそれで暮らしが営まれている雰囲気が美しいと感じるようになった。今では生活感のない、つるつるした雰囲気は苦手かも。

棚は大工造作だけど腕が良く、納まりもすっきりしており建築関係者がわが家に来ると決まって絶賛する。
壁から板が突き出たみたいな、支えが見えない棚ってたしかに他ではあまり見ないかもしれない。下から見るとこうなっている。

棚:大工造作(タモ集成材)
コンセント:JINBO NK
 

ワークスペースと充電基地

キッチンのそばで書類仕事や、パソコンしたりするスペースが欲しかった。
そこでパントリーの一辺をデスク用に100mm下げ700mmとし、配線用溝を掘り下にコンセントと棚板を作った。

キッチン内で冷蔵庫が見える場所に出るので、プリント類は隠しながら張り付けられるようワークスペース一面をホーローパネルにしてある。
磁石がつき、手垢はつかず冷蔵庫と同じ感覚で使える。これはガルバリウムとかの方が安いけど、実家のシステムキッチンがホーローパネルで劣化しないのを知っており採用した。
汚れ知らずで、拭くのも楽だしそれでいて工業製品ぽくなく満足度は高い。

デスクをつくると、その左側隅にデッドスペースが生まれる。ここを蓋付の充電基地にした。
最近はバッテリーを積んだガジェットが多く、どうやっても配線がごちゃごちゃしてしまうし、あれどこだっけ?や使いたい時に電池切れということが多い。あらかじめ造作で電源内蔵収納を作っておけば、美しくすっきり隠せて定位置管理でき、電池切れの心配もない。
こうした造作は、たいてい蓋の上にモノを置かれてストレスを感じるものだが、窓があれば塞がれずに済む。

大きさはw450 x d650 x h100、入れ方を気にしない程度には余裕がある。

机:大工造作(タモ集成材)
窓:YKKAP APW430
壁:ホーロー(タカラスタンダード)
充電基地:大工造作
コンセント:JINBO NK

 

キッチン


© 上田 宏

 

キッチン

キッチンは珍しいU字。4.5畳のスペースに、通路部分を広めに1,300mmとった。僕らは夫婦2人共キッチンに立ち、同時並行で料理する機会が比較的多く旧来のキッチンだとストレスを感じる。これだけ広いとお互いが邪魔にならないけれど、一人で料理するときはもっと凝縮されていたほうが作業効率はいいと思う。

水栓はHitsで特売のものを使用。その他機器施主支給バリバリで、本体の材質もかなりコストダウンした。最初建築家さんに勧められた無垢のキッチンには未練がある。

食洗機は Mieleの600mmサイズ。25周年記念モデルとやらで建築家さんのイチオシだったので、そのまま採用した。うちは食器少ないから小さいのでいいかなと思っていたけど、大きな鍋やBBQの網も入るので家事を楽にするメリットは大きい。

IHは Teka、w800mmで横3連のもの。幅広で3つ連なってが使いやすい。ただこれアイコンが意味不明なんですよね。あと天ぷらモードもないのに、チョコやチーズ溶かす機能は搭載している、、、

IHの前の壁はタイルをはらず塗装で仕上げた、タイルあったほうがかっこいいと思うけど、目地の掃除から開放される喜びは大きい。

 

工夫した点

シンクによく見る洗剤ボトル、スポンジ用の切り欠き。普通に作ると、オープンキッチンの我が家は南(リビング)側から丸見えになってしまう。
そこでシンク内に横穴を開けスポンジを収納し、洗剤はボトルを置かずに済むようソープディスペンサーを埋め込んだ。

シンクの下はゴミ箱収納にしている。幅800mmあるので、もっと幅広で容量の大きいゴミ箱を使いたいのだが市販品でないのが悩みどころ。製作を検討中。

改善したい点
・シンクの前がフラットで、水栓からの奥行きがないため、リビング側への水ハネが気になる
・キッチンの床材も他と同じクリのフローリング、水には強いけどアルカリには弱い(後述)

キッチン本体:家具造作
天板:ステンレスヘアライン仕上げ
側板:タモ合板フラッシュ
水栓:Grohe CONCETTO(施主支給)
IH:Teka IZ8320HS(施主支給)
食洗機:Miele G 4920 SCi(施主支給)
換気扇:富士工業 CNSRF-RKH-751
換気扇は前澤パッシブハウスくらいでしか見たことがない外気導入付循環型にしました。別エントリで書きます。

 

ダイニング(子ども部屋)


© 上田 宏


© 上田 宏

子ども部屋は、「コンセプト3-3 内的環境変化への対応」でも挙げていたとおり。この家を最低50年使うとして※ そのライフサイクルで必要なのは10年程度なので、はじめから個室が必要になったら区切り、不要になったらまた戻せるようにしようと考えていた。

そこで9畳のスペースを4.5畳づつ区切れるように、窓、コンセントを対称に配置。天井の照明も9畳の中を2系統に分け、3路スイッチをそれぞれに配置した。

間取り的にはキッチンの横に配置。こども部屋が不要の期間はダイニングとして使うので、シーリングライトを取り付けれるようにした。


© 上田 宏

床:     クリ無垢フローリング
ダウンライト:Panasonic 傾斜天井用ダウンライトLED
スイッチ:  神保NK
南側窓:   YKKAP APW431 大開口スライディング
北側窓:   YKKAP APW430 ツーアクション
コンセント: 神保NK+大和電器USB

※平均寿命まで50年近くあるし、この先軽井沢から離れても、別荘として使うつもりでいる。