上棟

棟上げの日は賑やかだった。

2018年の梅雨は短く、初夏の軽井沢らしい強い日差しの中、樹々が茂っている。
普段2−3人の現場が、この日は何人の大工さんが来ていただろうか。あっという間に進んでいく。

とはいえやはり屋根は慎重に。ミリ単位での調整と水平垂直出しが続きドキドキする中、形になるのが嬉しく、思わずカメラを構える。

ファインダーの中には、基礎だけの時には想像できなかった、キッチンに立ったときに広がっているだろう風景が、構造のフレームに切り取られ収まっていた。

野地合板を貼ったところで空撮。露出オーバーで屋根の形がわかりにくい。

第1案提案時の模型。

さて、上棟式をやるかやらないか。最近では全く見なくなったけれど、でも僕には絶対にやりたいことがあった。
僕が子どものころは通学路で基礎工事が始まると、その前を通るときそわそわしたものだった。それは他の子どもたちも同様で、学校での雑談でも決まって今日家つくり始めた、だれの家だなどの情報は集約された。

家を建てる建て主は小学生の子供を持っているか、友達の兄弟に小学生がいて、自然と通学区の上棟式の情報は集まって来る。
あの時の餅まきはなんであんなに楽しみだったんだろう。

気がつくと全国画一的な家が立ち並ぶ風景から、そのような地域のちょっとした、でも施主にとっては一生もののイベントを、目にすることはなくなっている。
自分の子どもや甥っ子が、この先僕らと同じワクワクを感じる機会はあるのだろうか。

ごち餅は、地元の和菓子屋さんに拵えてもらった。普通は2合ぐらいといわれたけれど、せっかくだから3合撒くことにした。

餅には砂糖が入っており、非常に柔らかくおいしい。子どもたちが両手に抱えきれないくらい拾っていて、すごく楽しそうだった。

棟上げ当日と翌日は防水まで早く仕上げたい。そのため工事を優先し、上棟式は後日にした。
よく行く日本料理屋さんで作ってもらった折詰を上棟式のあと、皆でいただき、建築家さん大工さんと話をする。大工さんにとっては面倒な工事だと思うのだけど、「勉強になりました」と謙虚におっしゃっていた。

自分なりにただ物を買うように家を買うことが建築と言えるのか、疑問だったし文化的なものを残したいと考えていた。
大工とか職人技というのも、日当いくらとしか比較されない時代。週休1日で働いて、道具車両自分持ちで、でも単価は叩かれやすい方に流れてでは持続可能性がない、それで長持ちする家が欲しいなんて虫がいい話だと思う。

次回は断熱についてです。

木工事

基礎が終わりいよいよ木工事。

建築家さんの初回提案で感動して、ほぼそのままでお願いしたのは以前書いた通り。

だけどその白模型を見たときに、失礼ながらほんとにこの形で建つのかな?と心をよぎったのは事実だった。

1本1本長さも角度も違い、勾配も4面違う屋根の形状。

お願いした大工さんは建築士資格もお持ちで、自らもCADで図面を検証。図面上では成立しているけど、実際に建てられるか、見積検討時に1/10軸組模型を作成されていた。
こういうの、城の見学とかでケースに入ったのは見たことはあるけれど、、、屋根だけ見ると家というよりF-117 とか一昔前のステルス機っぽい。

大変な仕事を頼んでしまったのかもしれないと思い、棟梁に尋ねると、
「大丈夫、建ちますよ。だけど40年やってきて個人住宅では一番難しいかも。だから自分たちでできる準備は全部やって、模型も組んで問題の起きそうなところをチェックしたんです」とのこと。

その心意気が嬉しかった。できますと言ってあとから駄目でしたと言うのはプロの仕事では許されない。PMでも、楽観の中に慎重さと念入りさを持つタイプでないと難しい案件はできなかったのを思い出した。

さてここはプレカット工場の片隅。屋根が複雑なため今回機械ではできず、大工さんが手刻みをする材料が多かった。
模型を前に確認しながら、大工さん3人で刻んでいく。

模型の棟木。角度がついている。

これ、わかります? 別の部分ですが105角の柱にこんな角度をつけていく。

手刻みの様子を見たあとで、プレカット工場も案内してもらった。
とても整理整頓されていて、すごいスピードで加工されていく。もともと、すべて手刻みでと言うような幻想はなかったけれど、これを見ると機械でできることは機械でやるべきだと感じた。ホワイトカラーの仕事と一緒で、機械にできないことを人間はやらないと生き残ってはいけない。

次回はいよいよ上棟です。