風呂

造作バスルーム

風呂は、躯体の性能を除いて、最も悩み時間をかけた部分になった。
建築家に設計依頼するなど、家造りにこだわりのある人の多くはまず在来工法か、ユニットかで悩むのではないか。そうして調べ始めてまた迷う、ネットを見てもいろいろなことが言われているし、設計者や施工会社に聞いても様々な答えが帰ってくる。

僕の場合もそうだった。もともとお風呂で本を読んだり動画を見たりするのが好きだし、ストレスが溜まるとホットドリンクを持ち込んで浴槽に浸かりながら音楽を聞いて過ごす。人一倍お風呂には思い入れがあるけれど、在来の造作バスは恐ろしいイメージがあり、踏み切れないでいた。

施主それぞれが重きを置く価値が異なり、答える側も知識不足、意図した誘導、認知バイアスがあるのだろう。
造作か、ユニットか一般的な論点を整理すると、以下の通りとなる。

■ユニットバスのPros/Cons
 ○水漏れの心配はほとんどない。
 ○冬あったかい。
 ○費用が低廉。
 ×材料、水栓など選択肢が限られる。
 ×カッコよさで造作に劣る。

■造作バスのPros/Cons
 ○自分ですべて好きな材料を選び作れる。
 ○かっこいい。
 ×冬寒い。
 ×水漏れリスクがある。
 ×費用が高い。

 

なぜユニットバスは暖かく造作は寒いと言われるのか?

僕も調べて衝撃を受けたのだが、昔の造作バスは水漏れリスク低減のためか、基礎から直接砕石や土間コンクリートをうち断熱材無しで浴室が置かれていた。確かに水が漏れても屋内側には侵入しないけれど、断熱区画外でタイルのヒヤッとした感じを裸足に感じたんだろう。何より裸だし室温自体寒かったはずだ。

ユニットバスは室内側区画に置くことができ、断熱材に包まれていて、水密性によって気密も取れている。素材もプラスチック系だったことが「造作よりユニットは暖かい」という評判を生んだのではなかろうか。

そこで超高断熱仕様の室内側区画に造作することで、普通の家のユニットバスより暖かくなるはずだ。僕は、はっきりと旧来型の造作バスの構造は受け入れられないと宣言した。
最近の家づくりブログを見ても、いまだに基礎直置きの造作バスが多いようで、冬寒いというのを読む。そんな家を提供するのは不作為だと思うし、施主の健康を何だと思っているのか聞きたい。

初めて入浴した日は11月下旬だった。軽井沢の平均外気温は4.4度、最低気温は氷点下の夜。
裸足でタイルに触れた瞬間に奇妙な気がした、体が覚えているあのひんやりとした感触がないのだ。意識せずに力が入っていた足の裏が、おそるおそるではなくフローリングと変わらない歩き方をするまで時間はかからなかった。

 

水漏れを防ぐ

在来が水漏れするというのなら、ユニットバスと同じ構造で造作すればいいんじゃないだろうかと考えた。
そこで調べてみると、昔の造作バスは、タイルが割れて底から水が侵入するなどあったものの、現代ではFRPで防水するので、適切な設計施工をすればユニットバスとそれほど変わらない。

FRPは海水に浮かぶボートなどでも長年使われている。耐水合板で区画した全体をすべてFRPで包む。直角部分が破れないよう工夫し、その上にモルタルをし好きなタイルで仕上げる。あとは下地の清掃と平滑、樹脂と硬化剤の配合をキッチリするなど腕と監理次第だと考えた。

また、水漏れが問題を大きくするのは、長年漏れていても気が付かず構造にダメージを与えるからである。残念ながら漏水センサーはこれといったものがなかったので、現状は温湿度センサーを配置してモニタリングしているが、床下に100V電源を配線しておき、コンセントを付け良い商品が発売され次第2重化して設置予定とした。

 

費用

費用については素材選定次第だけど、直接工事費はさすがに安いユニットにはかなり負けるものの、高いユニットバスよりはかなり安く収まった。
ただタイルの割付など、目地7mm, 5mm, 3mmパターンすべてCADで施工図を書き、施工自体も設備や防水など相当チェックする内容があるので、そうした費用は当然必要になってくる。

また想像だけど、施工会社観点だと水漏れって一大事、ユニットならメーカーの責任施工でほとんど何もしなくても工事が終わり、しかもアフターサービスも万全。造作で劣化し何かあったら対応はしなくてはいけない、でも保守契約もなく費用をいただいているわけではないので、サービスを維持するのは難しい。

施工会社視点では僕(自社の役員)が施主だからやったけど、一般的に提供するには保守費用相当を初期費用にいれるか、定期点検を有料化して定期点検を受けていないとアフターしないなどの仕組みを考えるしかない。後者のが納得感はあるかなと思うが、聞いたことがないので前者にしているのではないか。それが造作バスは恐ろしく高いという話の正体だろう。

 

さて、自由にできるとしてどういう雰囲気のバスルームを作ろうか。
折角造作だからホテルライクにしようとあれこれ調べた時に出会ったのが、注文住宅ブログの金字塔「羊飼いたちの休日」
豪華や華美という方向ではなく、品のある美しい浴室であり、「ホテルライク」にとらわれていた僕にとって衝撃だった。
ブログの他のエントリーも貪るように読み、素晴らしい文章と写真、背景にある深い洞察の虜になった僕は、タイルは名古屋モザイクのひだs、色はホワイトで馬目地貼り、目地幅3mmライトグレーとほとんど近い仕様に決定した。

水栓はHitsのグローエアウトレットでフル施主支給(お勧めしません)
数日間Houzzでバスルームを見て回った僕の研究成果によると、バスルームのかっこよさを決めるのは水栓が普通のか、埋込型かに帰結する。

浴槽はカルデバイのジャパンモデル。深いといわれているけど浅目に入ることもできるし、我が家はこの選択でよかった。

夫婦2人で日常的に入ることはないが、子どもたちとは基本一緒に入っている。取っ手がいるかいらないか悩み西麻布のTformに見に行った。子どもと入浴するときに、横幅が狭くなるのと、結局後付けなので見た目が気にいらないという結論になった。

浴槽の裏側は一応ウレタン吹いておいた。まあ少しお湯が冷めにくくなるかなという気休めである。

目地色は前述の通りライトグレー。ひだs馬目地張りでベタな感じになるのを、この色と目地幅が防ぎ流行りっぽくない感じが出ている。カビが心配だったのでエンタープライズ分野で使われるホーロー化コーティングを自分で塗った。疑似科学などではなくて本当に液体ガラスなので、塗ったそばからみるみるガラス様に硬化していく。
タイルの質感が変わってしまうので、使い方は要注意だと感じた。

ガラスドアはYKKAPの既製品。えっYKKAPにそんなドアあるの?と我が家を見に来た建築家さんたちが驚いていた。
このフレーム、ドアハンドルださいかなと思ったけど、親子扉開口で広いうえに防水もしっかりで、子どもがガラス越しに水かけまくったりしても大丈夫な安心感。費用も低廉だし、見た目は住み始めると案外気にならない。
とにかく無茶な遊び方をする子育て世代には強度、水密性含めおススメ。

体をふいたタオルで、最後の人がガラスドアを拭いて出るようにしている。いまのところ水垢がついておらず満足している。

壁:名古屋モザイク hida-s
床:LIXIL サーモタイル
窓:YKKAP APW430
浴槽:KALDEWAI Saniform Plus Japan Model
水栓:GROHE Grotherm 3000
ドア:YKKAP サニセーフⅡ HG
コーティング:日興 テリオスコートNP-360G
換気:三菱電機ダクト用ロスナイ VL-70BZ2

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