断熱工事

断熱について書くと長くなる。

もともと、コンセプトのエントリーの通り、高断熱高気密は「長く陳腐化しない家」の一要素でしかなかった。
ところが、書籍等を読むうちにその奥深い世界にすっかり嵌っていくのだった。

以前のエントリのとおり、様々な団体が色々な考え方を披露する中で、パッシブハウスの考え方に正解※ を見つけた僕は、その道の一流の方々に直接教わることにした。
新しいことをするときは、いつもそうやって一通り本を読み、第一人者を見つけ、なんとか直接コンタクトする。

土地を購入してから3ヶ月後、2017年6月に京都でパッシブハウス・ジャパンの建築建築診断士セミナーを2日間受け、建もの燃費ナビを使っての燃費計算を教わった。
セミナー、懇親会では主催者と直接情報交換も出来、その後、いろいろな高断熱住宅を見学しに行くことが出来た。
建築として、そして設計者の考え方として特に印象に残ったのは以下の5つ。

・前沢パッシブハウス(富山県黒部市)

・熊谷パッシブハウス(埼玉県熊谷市)

・Eco家(埼玉県川口市)

・軽井沢パッシブハウス(長野県北佐久郡)

・POLHAUS(新潟県新潟市)

軽井沢でパッシブハウスの性能を実現しようとすると、暖房需要15kWh/m2・年というハードルは極めて高く、数年前はわからないが2018年の建設コストでは完全に予算オーバーとなってしまった。
もともと高断熱は要件にあったものの、パッシブハウスまでの性能は求めていなかった。基本設計時に季節による日射取得と遮蔽が考慮されており、素性は良いが、2階建ても作れるほどの空間を持った平屋のため、平米あたりのエネルギー使用量では不利となる。

とはいえ実際に住むのは2次元ではなく3次元、平米ではなく立米なので、計算上有利にするために気積を抑えるのは求めるところではなかった。
見学時に、どの程度の性能でどう感じるのかメモをし、各設計者や施工会社と情報交換をして、最低限パッシブハウス・ジャパン推奨エコハウスゾーン以内の家とすることを決めた。

材料だけでなく施工まで含めたコストパフォーマンスを検討するため、様々な断熱気密仕様はあらゆる材料の単価見積を取り、施工と監理の手間や確実性も考慮したうえで、今回は以下の構成とした。

基本的な考え方としては断熱材自体は何でもよく、厚みまで含めた性能を理解し、正しい設計と施工が寛容。ただいろいろな住宅メーカー、工務店、施工会社、商社と話をしてみても本当にわかっている人が非常に少なく、材料メーカーはポジショントークばかり。パッシブハウス・ジャパンのトップランナーは建物にあったものを選定すればよい、家の性能は冷暖房需要というものさしで測るという考え方が良いと思う。

屋根
付加断熱:ネオマフォーム (0.020W/mK) 100mm 気密テープ
充填断熱:フォームライトSL-50α(0.026W/mK) 150mm


付加断熱:ネオマフォーム (0.020W/mK) 45mm 気密テープ
充填断熱:フォームライトSL-50α(0.026W/mK) 100mm

平屋のため、通常の家より高さが低い部分もあり、それほど外壁の面積は増えてはいないが、屋根は圧倒的に面積が増えている。
家が寒くなるメカニズムを考えると、家の中から外への熱の移動は放射冷却。宇宙のほとんど絶対零度に向かって熱が逃げるのを防ぐため、屋根断熱には力を注いだ。この断熱仕様で高性能GW16t 400㎜以上の性能がある。

付加断熱をネオマフォームにした理由は、隣地後退が厳しく南北で7m取られたことから壁厚を厚くすることができず、限られた厚みの中で少しでも熱抵抗の高いものを選定する必要があったためである。意匠的にも今回はあまり窓が凹んでいない、軽い感じの見た目が場所と建築の雰囲気に合うかなと考えた。またいろいろなパッシブハウス、エコハウスを見学する中で、事例が多数あり経年劣化が少ないことも選定理由となった。

充填に硬質ウレタンを選択したのは、家の形状と配線があまりにも特殊でありGWでは断熱気密が難しいスペースが多い点があるのと、限られた壁厚で性能を高めるため。ただし、一口でウレタンと言っても発泡倍率が100倍などのものは、透湿抵抗が低く熱伝導率も高い。こちらから品名は指定せず、発泡倍率が低く透湿抵抗が高い中で熱伝導率の性能も良いものをリクエストした。

充填断熱は、責任施工でトラックがやってくる。
工事が終わり家に入った瞬間しんとして静かで、なんとなく暖かい不思議な感覚がしたが、大工さんも口々にそう思うと言っていた。冬の現場ではコンクリの上に、ネオマフォームの端材を敷いて休憩すると全然違うそうで、更に充填でここまでやってるからとのこと。

断熱については窓の役割が大きいのだが、次回からWeb内覧会なのでそこで書くことにします。

※あえて強めに書くと、住宅は初めて建てるが、データセンターのPMとしては密度濃く最先端の仕事をし、冷却と省エネルギーについて膨大な時間費用を費やしてきたので自信がある。

上棟

棟上げの日は賑やかだった。

2018年の梅雨は短く、初夏の軽井沢らしい強い日差しの中、樹々が茂っている。
普段2−3人の現場が、この日は何人の大工さんが来ていただろうか。あっという間に進んでいく。

とはいえやはり屋根は慎重に。ミリ単位での調整と水平垂直出しが続きドキドキする中、形になるのが嬉しく、思わずカメラを構える。

ファインダーの中には、基礎だけの時には想像できなかった、キッチンに立ったときに広がっているだろう風景が、構造のフレームに切り取られ収まっていた。

野地合板を貼ったところで空撮。露出オーバーで屋根の形がわかりにくい。

第1案提案時の模型。

さて、上棟式をやるかやらないか。最近では全く見なくなったけれど、でも僕には絶対にやりたいことがあった。
僕が子どものころは通学路で基礎工事が始まると、その前を通るときそわそわしたものだった。それは他の子どもたちも同様で、学校での雑談でも決まって今日家つくり始めた、だれの家だなどの情報は集約された。

家を建てる建て主は小学生の子供を持っているか、友達の兄弟に小学生がいて、自然と通学区の上棟式の情報は集まって来る。
あの時の餅まきはなんであんなに楽しみだったんだろう。

気がつくと全国画一的な家が立ち並ぶ風景から、そのような地域のちょっとした、でも施主にとっては一生もののイベントを、目にすることはなくなっている。
自分の子どもや甥っ子が、この先僕らと同じワクワクを感じる機会はあるのだろうか。

ごち餅は、地元の和菓子屋さんに拵えてもらった。普通は2合ぐらいといわれたけれど、せっかくだから3合撒くことにした。

餅には砂糖が入っており、非常に柔らかくおいしい。子どもたちが両手に抱えきれないくらい拾っていて、すごく楽しそうだった。

棟上げ当日と翌日は防水まで早く仕上げたい。そのため工事を優先し、上棟式は後日にした。
よく行く日本料理屋さんで作ってもらった折詰を上棟式のあと、皆でいただき、建築家さん大工さんと話をする。大工さんにとっては面倒な工事だと思うのだけど、「勉強になりました」と謙虚におっしゃっていた。

自分なりにただ物を買うように家を買うことが建築と言えるのか、疑問だったし文化的なものを残したいと考えていた。
大工とか職人技というのも、日当いくらとしか比較されない時代。週休1日で働いて、道具車両自分持ちで、でも単価は叩かれやすい方に流れてでは持続可能性がない、それで長持ちする家が欲しいなんて虫がいい話だと思う。

次回は断熱についてです。

木工事

基礎が終わりいよいよ木工事。

建築家さんの初回提案で感動して、ほぼそのままでお願いしたのは以前書いた通り。

だけどその白模型を見たときに、失礼ながらほんとにこの形で建つのかな?と心をよぎったのは事実だった。

1本1本長さも角度も違い、勾配も4面違う屋根の形状。

お願いした大工さんは建築士資格もお持ちで、自らもCADで図面を検証。図面上では成立しているけど、実際に建てられるか、見積検討時に1/10軸組模型を作成されていた。
こういうの、城の見学とかでケースに入ったのは見たことはあるけれど、、、屋根だけ見ると家というよりF-117 とか一昔前のステルス機っぽい。

大変な仕事を頼んでしまったのかもしれないと思い、棟梁に尋ねると、
「大丈夫、建ちますよ。だけど40年やってきて個人住宅では一番難しいかも。だから自分たちでできる準備は全部やって、模型も組んで問題の起きそうなところをチェックしたんです」とのこと。

その心意気が嬉しかった。できますと言ってあとから駄目でしたと言うのはプロの仕事では許されない。PMでも、楽観の中に慎重さと念入りさを持つタイプでないと難しい案件はできなかったのを思い出した。

さてここはプレカット工場の片隅。屋根が複雑なため今回機械ではできず、大工さんが手刻みをする材料が多かった。
模型を前に確認しながら、大工さん3人で刻んでいく。

模型の棟木。角度がついている。

これ、わかります? 別の部分ですが105角の柱にこんな角度をつけていく。

手刻みの様子を見たあとで、プレカット工場も案内してもらった。
とても整理整頓されていて、すごいスピードで加工されていく。もともと、すべて手刻みでと言うような幻想はなかったけれど、これを見ると機械でできることは機械でやるべきだと感じた。ホワイトカラーの仕事と一緒で、機械にできないことを人間はやらないと生き残ってはいけない。

次回はいよいよ上棟です。

基礎

基礎工事は4月末から梅雨前の5月末までに行った。
地鎮祭の時に比べて、緑が青々としてきておりこの時期に現場を見に行くのは楽しかった。

追分基礎工事

先日、基礎は調べても調べてもどうすべきかよくわからないと家を建てる知人から相談を受けた。
結局ネットに転がっている情報では、何が正しく何が間違っているのかがわからないとのこと。

適切な基礎とは何か、判断するにはコンクリートとは何か、測量の知識、土木の知識が必要になるんだけど、そんなことを初めて家を建てる人ができようもない。
だから家づくりを任せた人を信頼してお願いするのが精神衛生的にもいいと思う。

追分基礎 アンカーボルト

施主側から見ると基礎が狂っていると、木工事でカバーできないという不安があるし、工程の最初だから神経質になる
一方で施工側としては正当な理由で重大な内容だけならともかく、まちまちな粒度で何も問題ない部分までワーワー言われてしまうと嫌になってしまう。

事前にチェックリストをもらいレビューするといい、どんなレベルで施工しているかわかる。
工事着手前に言いたいことは全て言っておいた方がいい、施工中に後出しじゃんけんでいろいろ言われても困るので。
そのうえで施工中は施主として以下の点をみていた。

・転圧をしっかりしているか。将来沈下したらいやだからね。
・防湿フィルムに破れがないか確認、なかった。フィルムの重ねしろも多めだった。現場監督と話していたら、一晩たてば水滴がすごく、もし乾いていれば破れているといっていた。
・かぶり圧の確認。これは基本中の基本だから大丈夫ですが、かぶり圧とりすぎ=無筋コンクリートなのでそれも気を付けてみましょう。

材料
うちの基礎は設計基準強度24N/mm2 スランプ15cm と、少しいいかなくらいで一般的な材料となった。
はじめは30N/mm、スランプ12cmとかっていうのも考えたんだけど、(材料のコストアップはそれほどびっくりするものではない)木造だし、いいスペックでも施工しにくくなってしまって結果出来上がりの品質が落ちるようではいけないということで、普段使わないものを避けなれたもので丁寧な仕事をする方を選んだ。

ただ我が家の場合は通常エンタープライズ向けに止水、躯体防水で使用される「けい酸塩系表面含浸材」を塗布している。
コンクリート劣化の原因を考えていくとたどり着く方もいると思うけど、僕の場合は自分の会社が扱っていて、CS-21というものを基礎外周と水平面に2回塗布した。
表面に塗布し、含浸させると空隙内で無機の固化物が生成され、空隙の充填が図られる。

養生、型枠ばらし
数日間養生をし、試筐体で強度を測定したあとで型枠をばらす。
住宅の場合、早いところだと5N/mm2 以上の呼び強度目安で脱枠することもあるとのこと。型枠も他の現場で使えるから、早く外したいんだろう。
今回は時期がよかったこともあるのか、3日後には18N/mm2 の強度がでていたが、はやく脱枠することなく、また外した後も木工事までは相当の期間を置いた。

型枠を外した日は、気持ちをおさえきれずドローンをもって見に行った。
コンクリートの表面は、安藤忠雄作品のような美しさはなかったけれど、ひび割れもジャンカもなく一般的にはきれいな基礎だと思う。

基礎内断熱か外断熱か?
我が家は建築士さん、施工会社が普段慣れている内断熱施工にした。
よく言われるシロアリリスク、基礎下スタイロフォーム敷き込みなどは沈下も心配だったし。
だけど全国のパッシブハウス、エコハウスを訪ね温熱環境を体感し、施工者とも話をするとやはり基礎外断熱でコンクリートの熱容量を内側に入れることは、消費エネルギー低減の観点からメリットが大きい。
もしつぎ家を建てることがあるとしたら、基礎外断熱を型枠同時打ち込みでやりたいと思う。

次回はいよいよ木工事~上棟です。

地鎮祭

解体が終わると、次は地盤調査の番だ。
一般的に軽井沢の中で追分は、地盤改良の必要がない場所が多いといわれているが、数10メートル離れるだけで結果が変わるのが地耐力の恐ろしさ。

時は2018年2月、全力で見積を精査している最中で、ココで費用が発生するとさらなる減額を進めなくてはならないので頼むという感じだった。

追分地盤調査

結果は後でレポートになってくるんだけど、立ち会っていれば良好か弱いか、その場でわかる。
終始和やかなムードで、最近この辺調査多いんですがいつも全然問題ないですよと調査の方はおっしゃっていた。

追分キツツキ

地盤調査中に見つけた木。キツツキの穴、のどかだななんて思っていたら、内部がやられているので早く伐採しないと大変なことになるらしい。
着工前に伐採したら、大きく空洞になっていてびっくりした。

・・・

地鎮祭は4月のはじめ日曜日、大安におこなった。
特筆すべきことは何もない。

そこにコストをかけるのはどうかなと思ったので、神主さん以外の手配は全て自分たちで済ませた。あらかじめ施工会社にて5か所にくい打ちをお願いし、早朝、近所で竹を切り、運び、設営。
テーブルに白い布をかぶせ、持参した皿にスーパーで買ってきたタイをのせた。

神主さんが祝詞をよみ酒を撒くのを、まだ寒い風の中みていた。
近所に住む父と母を呼んだら、式と名の付くものだからと少しきれいな格好で参加していて、アウトドアウェアに身を包んだ僕ら家族と対照的に立っていた。その横に孫たちは体を揺らせながら不思議そうな顔をして立っていたが、鍬入れになると、私も僕もやりたいと騒ぎ始めた、いつものとおり。

特筆すべきものは何もないといったが、そういえばあった。
施主挨拶のため、家を建てる経緯や自分の思いをまとめた。進行を神主さんに任せていたら、挨拶なく終わってしまったんだけど。

それが今こうしてブログになっている。

追分地鎮祭

解体

古家には、家財道具が残されていた。
それはここで夏の余暇を過ごしただろう、画家家族の思い出が残されているようでもあった。
土地購入の際に尋ねると、もう必要なものは引き上げたから、全て処分してもらって構わないと聞いてはいたけれど、そのままゴミにはしたくない。

その頃、同じ長野県内で解体現場から家具や床板を救出し販売しているお店を知った。彼らはそれを「レスキュー」と呼び、まだ1年経たないその時点で100件以上もの実績を重ねている。

興味が湧いた僕は、お盆休みにそのお店のボランティアをし過ごすことにした。
上諏訪にあるお店で日中レスキューした床板の掃除をし、内装工事をし、ディスプレイを整える。昼食、夕食は同じボランティアやスタッフの方と手料理を囲み、雑談から苦労話までいろいろな話をした。

上諏訪は、温泉と諏訪湖の花火大会で有名な街だ。一日の終わりに近所のお風呂でさっぱりするころ、お盆だったためか毎日打ち上げ花火が上がった。
帰り日に路地裏を歩きながらみた花火は、日本の地方のいい部分、残したい部分を強く思い起こさせたのだった。

泊まりこんだ3日間で彼らの思いに触れ、「レスキュー」をお願いし、こうして夏の終わりに、残された家具や食器は諏訪へと向かった。

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軽井沢のアトリエからレスキューした古道具たち . 先日はちょっと遠方、軽井沢までレスキューに。もともとアトリエとして使われていたお家。おそらく画家さんが絵付けしたであろう手作りの食器なんかも。 . ふだんなかなかお目にかからないような、ちょっと洋風な古道具がいっぱいです! . ディスプレイはサポーターズと一緒にやりました◎今回も素敵なブースになりました!ありがとうございます。 . (りょーこ) #rebuildingcenterjapan #リビセン #古道具 #アトリエ #レスキュー #ゆるいお皿たちかわいい #stocks

ReBuilding Center JAPANさん(@rebuildingcenterjp)がシェアした投稿 –

解体は、設計ができるまで待ち、2017年12月にお願いした。
待ったのにはもちろん理由があって、解体工事には重機が入るので、建物配置に合わせて伐採玉切りも同時にお願いすることでコストを削減するため。

もちろん、家屋滅失届も自分で作成して提出。
我が家は建物登記なかったんで町役場ですが、登記があってもネットで調べれば簡単で数万円節約できるので自分でやるのがオススメです。