ディテール:床材

フローリングはクリの無垢材を採用した。

家造りを始めるまで床材の種類など全く興味がなかった僕ら家族。たまたま設計中に、軽井沢から1時間半くらい北にある小布施へ遊びに行ったことがあった。
小布施町は住民主体で個人の敷地、庭を開放しそれがつながって回遊できる街となっている。また、まちじゅう図書館といって個人宅内に本を置き、半公共スペースにし交流が生まれている。

そのすごく素敵な街で歩道として使われていたのが、小布施の名産品「栗」。すっかり小布施ファンになった僕らは、建築家Sさんのおすすめもあってクリ無垢フローリングについて調べてみると、いいことがたくさん書いてあって、これしかないだろうと決めたのだった。

水回りについて

無垢材のフローリングにする場合、洗面脱衣所、トイレ、キッチンへの採用は迷うところだと思う。Sさん曰く、栗は傷や水に強いので全面的に使用でき子育て中の家族でも大丈夫とのことで、和室とWIC以外のすべてをクリ無垢フローリングで統一した。

1年が経過し、一部洗剤のアルカリ性に反応して黒色になることがあった。クエン酸でかなり戻ったけれど。水染みは問題ないレベル、でも木の上に水がつくのが気持ち悪くて都度気にしてしまう。次また建築するなら、僕の精神衛生のために水回りはタイルかモールテックスにすると思う。

洗面脱衣所とお風呂に床がズドンとおんなじ床材、黒系の大判タイルやモールテックスというのは見た目も格好いい。

傷は硬めの木だけあってあまり気にならない。子どもが3人いると、大人だけの生活では想像できない使い方をする。
当然のようにミニカーでガシガシこすったり、椅子を引きずって歩くけれど、そんなことでいちいち怒ったり行動を制約したくない。

よく見ると傷はついているけれど、それで内部の部材が見えたり劣化を感じないのが無垢材の良さ。
幅広のものよりも幅が狭いほうが凹凸が多いため傷は目立たないと聞いていたが、それもあるのかもしれない。あるいは子どもができてからだいたいのことは気にならなくなったか、多分後者だろう。

厚みは15mm、10年に1回1mm削っても50〜60年は全然平気ですね。

床暖房は必要かどうか問題

家を見に来た人にだいたい聞かれるのが「床暖房はつけたか」
我が家は減額前から予算不足だったので検討もしなかったけれど、雪深い温泉宿で玄関や廊下、部屋のフローリング部分に床暖房があると足が触れた瞬間にうれしくなるので、質問する人の気持ちはわかる。

聞く人の外皮性能がわからないので、「うちの場合は」という前置きになるけれど床暖房はつけていないし必要性も感じないと説明する。屋外が−10度でも、床を含むすべての面の表面温度は20度あり、寒さを実感することがない。パッシブハウスでも床材がタイルなどだと、床暖房があると嬉しいかもしれないけど、無垢床なら床暖無しスリッパなし靴下なしで一年中過ごせる。

ちなみに我が家はメインエリアは薪ストーブ以外無暖房、基礎断熱。床下から床上に空気を吹き出すようCFファンを仕込んであり24時間運転している。外皮性能が高く床下の温度が常に温かい前提で、軽井沢でも床暖房はなくて大丈夫だった。

普段裸足で生活する僕ら家族にとって、人工的でないこの肌触りとぬくもりは何よりも代えがたい。

仕様
クリ無垢フローリング UNI 1,820 x 90 x 15 mm 無塗装
オイル塗装(自主施工)

ディテール:レンジフード

室内循環式レンジフード。見積中に森みわさんが設計した前沢パッシブハウスで実物をはじめて見て、仕様変更し採用した。

前沢パッシブハウス

従来のレンジフードは調理の際に発生する油煙や蒸気、臭気などの汚れた空気を屋外に排出している。
当然、室内は負圧となり排出した分、外部の空気を取り入れることになる。冷暖房負荷が上がる。

それに対し室内循環式は、換気扇の中でフィルターに通すことで汚れや臭気を取り除き、奇麗な状態にしたものを室内に戻して循環させる構造になっている。

スタイルはやぼったいのに、アリアフィーナなどより高価で、温熱環境の為だけの人柱だと思っていた。
パッシブハウスでもここまでの設備を導入する例は少なく、コストの問題から関係者でも賛否は分かれる。ガスでは採用できないので商売でお客様の家を作る場合は歯切れが悪くなるからではと思うが、料理する際に外気を入れなくて良いのは冷暖房負荷低減の上で大きなメリットとなるはずだ。

実際、冬に大きく恩恵を実感することとなった。よく冬季の乾燥を防ぐためストーブの上にやかんを置いたり加湿器をつけないと湿度が30%台になるという話を聞く。第1種全熱交換換気のエコハウスでも40%いくかいかないかというところをいくつか見た。

我が家の場合は22℃のとき、相対湿度45%〜55%くらいで安定している。引っ越しから1年経過し、過乾燥による肌荒れなどは感じていない。

さて、揚げ物をよく作る僕ら家族としては、以下の2点が不安だった。

1.匂いはとれるか。
揚げ物の空気が室内に戻るなんて、本当に匂いは取れるのだろうか。その心配は完全に杞憂だった。前の家で使っていた普通のレンジフードよりも、匂いがしないのはどういうことだろうか。

IHではガスコンロと異なり、フライパンや鍋周りの無駄な上昇気流が発生しないので、そもそも部屋の中に油が拡散しにくい。だからだとしか説明のしようがないが、先日もうちでパーティーをやり牡蠣フライをたくさんあげたけど、友人たちも匂いはしないと言っていた。

いちおう補助換気機能付きで、普通の換気扇と同じようにダクトを接続し、匂いの強いものは室内に戻さず排出できるタイプを選定している。だけどカレーのときですら出番がない。使ったのは一度ポップコーンを焦がしてしまい思いっきり煙が出たときくらいだ。

室内循環式レンジフードの補助換気

2.換気扇が油べったりにならないか。
フィルターで空気をきれいにして戻すということは、どうなってしまうんだろうと心配していた。
実際には個人がアクセスできるのはスロットフィルタまで。油吸着、脱煙、脱臭などの各フィルタはメーカーのが数年に一度来てメンテナンスしてくれる。
スロットフィルタ手前までの部材はもちろん食洗機できれいになるので手間いらず。

もちろん室内が負圧にならないので、薪ストーブとの相性もバッチリ。
見た目の部分だけ工夫すれば、高性能住宅で特に薪ストーブを使う家にはぜひおすすめしたい設備だと思う。
ガスコンロの場合は燃焼で大量のCO2が出るため室内循環式は使えない。その場合は同時給排式になると思うけれど、物によっては強風や薪ストーブで使用していないときでも外気が入って来てしまうと関係者から聞いたので、気密施工のプロにおすすめを確認したほうがいいでしょう。

仕様
富士工業 室内循環式レンジフード 補助換気機能付きシリーズ NSRF-RKH-751