今回は窓についてです。
ガラスの天井とか、そういう話ではありません。
家づくりについて調べる過程で絶対に譲らない項目として決めたのが、すべての窓を樹脂または木のトリプルガラスにすることだった。
なぜトリプルガラスを選ぶべきなのか、その性能については良い本がたくさん出ているので割愛する。
減額で和室からは床框や地袋が失われ単なる白い部屋となっても、3枚のガラスを残した判断は正しかったと、冬だけではなく1年を通して日々感じる。
和室はそのうち漆喰をDIYすればいい。後からだって、あれこれ考え楽しみながら手を入れられる。
でも良い窓に交換するのは違う。工務店に見積依頼をして高額な費用をかけ、住みながら騒音振動を我慢して実現する。どれも初めから世界標準の窓にしておけばしなくていい苦労だ。
窓から目の前の庭と雑木林を眺める。
我が家の快適な暮らしはもちろん建築家Sさんの空間創造能力によるものだけれど、その空間はこの窓の性能によって支えられているといっても過言ではない。
冬は-10度にもなる軽井沢で、大きな窓ぎわの雪景色を側に家族で朝食をとる。窓の断熱性が高くないと、こんな間取りは無理だ。
カーテンを使わず、もちろん結露もない暮らし。
YKKAP APW430シリーズ
トリプルガラスでも選択肢は様々だ、例えばパッシブハウスではUNILUXの採用例が多い。価格も僕が建築した当時ではAPW430シリーズとそれほど変わらず、惹かれる気持ちはあった。
でも、せっかく窓が遅れている日本において国産でいい窓作ってくれたんだから、APW430を採用しようと決めた。
日射取得する南側は大開口スライディングとした。
またそれ以外の方位はほぼすべての窓でツーアクションを採用した。この窓は軽井沢や信州の自然豊かなを地で何棟も設計してきた建築家さんおすすめの開き方をする。
ほとんど視界を妨げない網戸が外側についており、レバーを90度回すと内倒しで上部が開き自然換気ができる。
より通風が欲しい場合はハンドルを180度回せば全開でき、窓ふきも室内から虫の心配なく行うことができる。
自然は感じたい、けれども窓を開けて虫が入るのは困る、森に囲まれた暮らしにぴったりだ。
もちろん住宅街でも2階建て以上などで、窓は開けたいけれど小さな子の転落が気になるという家族にもおすすめできる。
これらの窓は設計時「建もの燃費ナビ」で熱取得と熱損失の収支を計算し、減額時に窓のグレードを下げるのではなく、性能に寄与しない開口部を減らした。
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国産というと昔から樹脂窓を作っているエクセルシャノンと迷わなかったか、これから家を建てるマニアックな人に聞かれることがある。
パッシブハウスで認定を視野に入れている場合は断面構成を含めた情報を開示し、熱貫流率のカタログスペックが正しいことを証明しないと、認定用プログラムPHPPでの計算に使えない。自分たちの製品を厳しい目で検証されても問題ない自信があればできるはず。
それができているのがYKKAPの窓。
レガリス?エルスター?
木製FIX
雨がかかる心配が少ない上部のは、地元の木工建具工場で製作した木製窓がはめられている。
勾配に合わせて加工し収められているのはACGのトリプルガラス。
心配だったのはAPW 430/431と異なりアルミスペーサーである点だけど、冒頭のように冬に放射温度計で計測したガラス面の表面温度は1度しか変わらない。
この窓が僕らにもたらしたもの
雑木林の木々から芽がいぶくのを見て春の訪れをおぼえ、
夏には一面の緑のなか、心地よい風を流す。
気温が下がり紅葉する秋は、肌寒さを感じることなく目の前の黄金色だけを楽しむことができ、
冬には床に落ちた光が陽だまりを作り、柔らかい暖かさを伝える暖房装置となる。
自然は時に過酷だ。
僕らが和室の内装と引き換えに手に入れたのは、必ずしも人にやさしいとは限らない軽井沢の四季を、感じ楽しむことができる暮らしだった。