醜い景観を感じる眼
17歳まで佐久で生まれ育った僕は、当然軽井沢が避暑地であることは知っていた。
ただ、そのころは夏休みに国道18号がとてつもなく渋滞するから近づかないとか、ふらっと入るとコーヒーで1杯1000円とる店があるとか、高校の同級生が住む軽井沢の家は洗濯物が湿気が多くて全然乾かないらしいといった程度の認識だった。
18年後Uターンで佐久に戻り、週末に家族で出かけるようになってから、別荘地に美しい町並みが存在することに気がついた。
なぜ昔は気が付かなかったものに気がつくようになったのか。
実家を出て19歳のときに、遅めデビューで海外に行き、その後幾度となく旅行、出張で美しい街並みに触れたからなのかもしれない。
むかし瀬戸正人先生に写真を教わっていた頃、よく言われたのは「いい写真を見て、これはいい写真だとわかるには、写真を見る目を育てる必要がある」ということだった。
先生の言葉を借りれば、人間の感性は訓練する必要がある、洋服などは毎日考えるけど、普段考えないものは意識しないとセンスが育たないのだと言っていた。
美しくないものを見慣れてしまって気が付かなかったけれど、街並みにも同じことが言えるのではないか。
規制の厳しい軽井沢町
軽井沢の別荘地に美しさを感じてから、なぜ実家周辺とは地理的に近くにありながら、そのような違いが出るのかを調べてみた。
軽井沢は昔から美しさを大切にしており、看板は景観条例で高さ、大きさ、色が規制されている。
リンク先の通り、郊外のロードサイドによくある奇抜なものは出せない。別荘地によくある案内板だって、
別荘を所有されている皆さんや、町に住んでいる皆さんが自分の家を他の人に案内するために設置する看板は、「幅が12cm、上の辺が45cm、下の辺が50cmの矢じるし形の板」へ「焦げ茶色の地に白文字」で書いたものを使ってください。
なお、この規定に沿った案内板を町環境課の窓口で配布していますので、ご自身でお名前などを書き入れてご利用ください。
自然と統一感が生まれるわけではなく、やるべきことをやっているのだ。
建物についていえば、別荘地は条例で1区画300坪以下に分筆はできない。道路後退5m、隣地後退3mと定められている。
軒を最低50cm出した建物で、屋根勾配や外壁の色も規制の対象となる。
個人的にはもっと厳しくてもいいと思うけれど、こうして日本にしては厳しいレベルの規制がされているので、美しい街並みが保たれていることがわかった。
軽井沢に住む
今はそうでもない*1 けれど、そのうち街並みが土地の価値を左右するようになるだろう。
統一感のない街並みをつくる建物群や廃屋、せっかくの浅間山がある景観に飛び込んでくる、けばけばしい看板類にうんざりしていた僕は、軽井沢町に住むことに決めた。
*1 2016年末頃の軽井沢町追分の坪単価は、佐久市内の主な宅地の半額以下だった。
↑その後土地探し中に「ニッポン景観論」を読んだら、感じていたこと、言いたいことが全て書かれていて驚きました。
土地探し前に一度読まれることをおすすめします。