北陸地方で学生生活を送った僕は、毎年必ず正月に帰省し佐久市の実家で過ごしていた。涼しく熱帯夜がない夏の時期ではなく。
大好きだった金沢だけど、暮らしてみると痛感するのが冬の辛さだ。寒さは東信の冬に慣れていればなんてことはない、でも鉛の蓋が重しとなって冬の間じゅうのしかかるかのような空にはどうしても気持ちが沈んだ。
成層圏まで抜けるような青空と、冠雪した浅間山のコントラストを年末年始毎日のように眺めると、この地域の晴天率の高さを実感せずにはいられなかった。
実際に計算してみるとわかるが、軽井沢はII地域になり寒いのは事実だが、冬期日射取得できるエリアだ。北欧などの事情に詳しい方曰く、八ヶ岳周辺地域は、中緯度地域では冬季の太陽日照量が世界最大級の恵まれたエリアだという。
そんな地域にエコハウスを建てたのに、太陽光は載せなかった。この屋根の形だから?いや、建築家に責任はない。太陽光を導入する資金があるのなら、その分をまず断熱や窓に振りたいと僕が最初から伝えていた。
© UEDA Hiroshi
15年くらい前の話だ。電力会社の新入社員だったころ、支社で系統連系の技術協議をしていた。真面目な街の電気工事店に交じり、高齢者の家々をローラーで回る一団が壺か布団を売るかのように太陽光発電を契約するのを目の当たりにする日々。何社かあったが、電気の知識などまるでない営業、まともな図面もかけず走り書きのような単線結線図、安い材料と雑な施工という点は共通していた。
それからほどなく現場を離れたので東日本大震災以降のことはわからない。ただ野山の景観や保水性を無視した計画でパネルが並べられていく様、高額な買取価格と結果として発生した権利の金融商品化というイメージが先行し家づくりの最初から「太陽光は載せない」と決めたのだった。
竣工して1年たたないうちにやってきた台風19号。軽井沢町は停電の多いエリアだ。樹木の間を時に接触しながら各家庭へ電気を届ける架空線は、降雪や台風に弱く半日程度の停電は毎年のように経験している。この時も3日間の停電となり、そろそろ冷凍庫が心配だから会社からポータブル発電機を借りてこようかと思ったところで復電した。
断熱性能に優れ十分なストレージを備えた御影用水エコハウスは、もし冬に停電してもどこかへ避難はせず家に籠るつもりだ。IHが使えなくても、窓開けの必要はあるがキャンプ用品のカセットガスコンロ2台と冬なら薪ストーブで煮炊きできるし、断水してもエコキュートには460ℓも貯蔵されている。もし断水しなければ水圧があるので、台風19号の時も経験したのだがあらかじめ温められたお湯のおかけで普通にシャワーが使えるのは嬉しかった。
補足ですが、エコキュートで蛇口やシャワーからお湯が出たのは水圧がある=断水していないからですね。
断水した場合、本体タンクの非常用取水栓から出せるので、生活用水の備蓄にはなりますが、普段通りにはいきません。
今回僕も、エコキュート停電してもお風呂2回入れ精神的衛生的に助かりました!— shiro (@ki460) October 15, 2019
でも、MacBookやスマホのバッテリ残量や冷蔵庫冷凍庫の温度を気にする生活は、電気以外避難する必要のない生活がおくれるだけにもったいないと思ったのは事実だ。
もし太陽光を搭載していたら、商用電源が停電しても発電中は冷蔵庫を冷やしたりできる。iPhoneくらいなら持っているいくつかのモバイルバッテリーで何とかなったが。3日間の停電でも冷凍庫は半分以上解けなかったので、日中さえ冷やせれば相当の期間食料備蓄できるなと実感したのが大きい。
災害時に家で過ごし煮炊きに困らないなら、食事も普段通りに近いものを食べて過ごしたくなるのが人間というものだ。僕が感じてきた釈然としない気持ちは、太陽光発電が悪いわけではなく、制度設計や一部の販売会社のためなのだから、次建てるなら、どう太陽光を使うのかあるべき姿を示したいとも思った。
…
そして2020年。10kW以上の売電金額はずいぶんと下がり、本来やるべき自家消費のための販売活動がなされるようになりつつある。オフィスでは葛藤なく太陽光を搭載した。
パワコンからの自立コンセントを冷蔵庫のコンセントの横に配置。さすがに仕事する必要もあるので電気自動車をバッテリ代わりにしてサーバ、ストレージ、PC、複合機類を救う。
リーフには40kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載されている、システムをクラウドに寄せていることもあり当該回路の負荷は合計でも平常時2kW以下、朝から16時くらいまでは発電が上回っているのでバッテリを使わず、16時以降や朝のみ給電する。停電しても3日間程度は業務継続したかったので空調や冷蔵庫などの一般負荷は接続せず、照明も一般回路とV2H回路の千鳥配置で間引き点灯するようにした。
晴天率の高い地域で一般家庭ならここまでの電池容量は必要ないので、テスラなどの家庭用蓄電池で良いと思うし、安いリーフの中古というのも面白い。法人なら社用車1台と入れ替えることで車両費用、ガソリン代削減効果が計算でき、7年リースで費用化して日産がバッテリを7年保証していることを計算すると、月間走行距離にもよるがランニングコスト年間10万円程度でこの仕組みが導入できる。
太陽光発電だけでは発電しない時間帯に電気が使えないのは当たり前だが、いくら大容量の太陽光発電を搭載し十分発電できても、自立コンセントしか使えない。まあそれでもスマホを充電したり冷蔵庫を冷やしたりはコンセントを切り替えればできるけど、蓄電池やV2Hがあればいったんそちらから給電することでパワコンに復電信号が入るので、負荷次第だが電池容量を使わずに家じゅうで電気が使えるし、さらに余れば充電もできる。このメリットは小さくはない。
オフィスではもちろん日中太陽光発電で発電した電気で、電気自動車の充電、エコキュートの湯沸かしをしている。ちなみに一般家庭(10kW未満)の場合は2020年認定では、まだ時間帯別料金契約で夜間に購入するより売電価格の方が高く、電気自動車は夜充電したりエコキュートを夜間焚き増しの通常設定にした方が価格差から金銭的にはメリットがある。不思議な制度設計だがその代わり固定買取の期間は10年間と、10kW以上の20年間に比べると短い。
AiSEG2について
回路の電流計測ができるPanasonic スマートコスモ分電盤を選定しAiSEG2を接続している。
回路単位で何がどのくらい使っているかを見やすく表示できるのは楽しい。
スマートメーターに接続して表示したり、電気自動車の充電状態も表示できる。
対応のエアコンや家電機器なら(Panasonicに限らない)スマホアプリから遠隔で状態確認や操作が可能。オフィスでは三菱エアコンのON/OFFに使用している。温湿度センサーを接続すれば部屋の温度も表示できる。
生活していないので湿度は低め
つぎ建てるならと思うほどのことではないけれど、このブログをネットで見つけ読んでいる人は、僕と同じような傾向があるだろうから導入すれば多分気に入ると思う。
いつも色々な話題、とてもわかりやすい説明、ありがとうございます。
今回のテーマも、自分では分からないモヤモヤがスッキリ溶けて、感謝しています。
何となく、太陽光&VtoH & リーフ進めています。
東京の家建替えてて、小さな太陽光発電パネル設置して(4.5kw)、
今ニチコンの設備を注文しています。
リーフは62kw乗っています。
(東京-軽井沢往復出来ます。)
将来的には、追分の家にも、設置する予定です。
たけりんさんこんにちは!
太陽光+V2H+EVいいと思います、家なら全負荷まかなえますね。そしてニチコンで良かった、三菱電機はV2H撤退だそうです。
日本のメーカーは技術者が優秀でも会社としてのビジョンが弱いので、戦略がちぐはぐだったり後から見ると勿体ない撤退売却を繰り返しているようで歯がゆいです。