ディテール:枠について

ディテール編の最後に、わが家の枠を紹介します。

建具の枠、窓枠の納まり

巾木同様、家づくりするまで、いや住み始めてからも他人に指摘されるまで気にしていなかった存在は、壁とほぼフラットな納まり。
このほぼフラットというのがシビアで、通常のように10-15㎜程度あれば気がつかない上下左右で0コンマ数mm単位の違いも目立ってしまう。下地にも左右されるこうした状態を大工さんはこぼれるとか、逃げが効かないと言うそうだ。

完全に理解はできないもののニュアンスは伝わった。

遊びに来た人の言葉に反応し、建具を見上げてみる。一枚の板にスリットが刻まれており言われてみると美しい。建築家さん、大工さん誰も施主に説明しないんだからにくい。

確かにわが家を見に来たプロたちが、棚や建具、枠や巾木をよく観察していたのはそういうことなんだと思う。

ヒバについて

例えば玄関。

2枚の板を組み合わせているように見えるこの部分、1枚の板から切り削り出されたもの。

外壁ができガラスが入り足場が取れ、森の中に家が見えたころのある日、わが家の現場に入ると美しい香りがした。

香りが美しい、形容詞の使い方がおかしいけれど思わず「美しい」と感じるその匂いの中で、大工さんがきびきびと仕事をしている。作業台の周りには、カンナによって削られたヒバが丸まっており、拾い上げ伸ばすと長くて透ける、鰹節を思わせる削りカスから匂いの正体が強く立ち上がるのだった。

テラスにも使うことになっている、ヒバについて気になり、手元の木材大図鑑で調べてみる。
明日なろうの話で、木に詳しくない僕でも知っていた数少ない木の一つ「アスナロ」の一種、枝が接地したところに根を下ろす、主に青森を中心とする雪の降る寒冷地で育つものをヒバと呼ぶそうだ。(アスナロは種子からしか発芽しない)

ほんの少しの光でも300年以上生き、厳しい寒さのなか百年単位でじっくりと成長するため、緻密で狂いが少なく、木目も細やかで美しい木材になる。

水湿耐久性が高い材として知られている。青森県にある猿ヶ森ヒバの埋没林は、数千年前から断続的に海から砂が打ち上げられ、ヒバが飛砂に埋まり立ち枯れてしまった。木は埋まってしまえばやがてシロアリや木材腐朽菌によって土に還るはずだが、なんと埋没林では800年前に立ち枯れたヒバが姿を現し、幻想的な風景で観光地になっているという。「木材大図鑑」によると、なんと大半が材として使用できる状態とのこと!

その秘密がヒバに多く含まれる「ヒノキチオール」とそれに似た成分の「β-ドラブリン」で、非常に強力な抗菌作用があるそうだ。
ヒノキチオールとは、いかにもヒノキに多そうな名前だけれど、ヒバがヒノキの約10倍含んでいる物質だという。多くの雑菌類やカビ類、ダニなどの増殖を抑える力があり、カビや腐朽菌に対して活性が高く、耐性菌の出現を許さないという特微がある。

岡部敏弘、斎藤幸司『木材抽出成分の薬理効果』によると、1リットル中にヒバあぶらが僅か0.8グラム入っていれば黄色ブドウ球菌は発育が阻止されるとされている。

蚊や白アリを寄せ付けないのもこうした成分が多く含まれるからで、東北地方の神社仏閣には多く使われているとのこと。

なるほど、つまりヒバはヒノキに憧れたり、明日なろうなんて思う必要はまったくない木だった。

窓の取付位置について

付加断熱で壁厚が厚くなると、窓の取付位置を外側にするか内側にするか各設計者や工務店で色が出る。断熱や日射取得の観点から遮蔽したいなら内付け、取得したいなら外付けとか、あるいは耐久性メンテナンスの観点から語られることが多い。

意匠的な観点からは内付けだと外から見たときに窓が凹むため、外皮の高断熱さを物語り、それが好みの人もいるだろう。僕は外観からはゴツく見えないのが好みで、わが家のように外付けだと、窓枠を木でできた飾り棚のように使え暮らしの良いアクセントになる。

まあ、恐ろしくズボラなわが家では花とか手入れするようなものは難しいけど、展示会でもらってきたポストカードや、

子どもが作ったばかりで、まだ片付ける気分にならないレゴなんかでもそれっぽく見えるのは設計&大工の力。

特に付加断熱100㎜越えで合計200㎜以上あれば、外付けの場合の窓付近は素敵なスペースになると思う。当然だが、オール樹脂または木サッシで結露しないことが前提である。

さもなくば、冬にそのスペースは寒さ、水分、そしてカビと頭痛の種になるだけだろう。